« 356のエンジンスタート・アクセル | トップページ | オイルフィルターの真実 »

2008年5月19日 (月)

エンジンスタートはゆっくりで

ブログ更新は毎週にすること! と思いつつ、月日が経つのは速いものです。

前回のアクセル操作で質問をいただきましたが、VWと356のキャブ操作は違います。 

356はアクセルを踏んで「ガソリンをチョロチョロ出す」ことで、冷間時の始動性を良くします。

VWはアクセルを踏んで「チョークレバーが閉じてエアをしぼる」ために、一度だけ踏んでチョーク機構を準備させて、冷間時の始動性を良くしています。Sany2907

(VWキャブのチョークシステム、2枚目の写真・8番のバタンコがレバーの刻みに掛かる)Sany2908

エンジンは一発で掛かるのが「皆さんの理想」ですが、エンジンとしての理想のスタート方法は違います。  なにが違うかというと、「耐久性」が違います。

エンジンの内部にはベアリングが入っていますが、これは皆さんが考える「丸い球コロがクルクルまわる」という、ボールベアリングでもないし、「丸い筒がクルクルまわる」という、ローラーベアリングでもありません。 プリA1500Sにはローラーベアリングのクランクシャフトが採用されましたが、これもロッド・ベアリング(子メタル)のみがローラーです。

エンジンのベアリングとは、単なる丸い筒状の円筒。 まるいワッカです。 鉄の台に銅合金とケルメット処理をされた、高価な円筒の部品で1/1000単位の精密部品。

これがエンジンの内部の回転を支えていますが、5000回転も回っていれば、オイルがなければ数秒で壊れます。 アイドリングでもオイルがなければ10秒で焼けるでしょう。

Sany2871 (オイル不足で焼けてしまったコンロッド・ベアリング)

オイルが入っていれば大丈夫なのは、中で勝手にオイルが撒き散らかっているのではなくて、オイルポンプという部品が圧力をかけたオイルをベアリングに送っているからで、その油圧が掛かったオイルが「オイルの幕」を作っているから、壊れないのです。

Sany1912 (3分割からのオイルポンプはVWと直径は同じながら長さが増して油圧が増えた)

Sany1936 (油圧ランプはアイドリングで点灯しても1000回転以上で消灯すること)

自動車が雨の中で水の上を走っている時、高速でハイドロ(アクア)プレーニングを発生させるように、クランクシャフトが「メタル内部のオイル幕」の中で浮き上がる動作になり、理論上「オイル幕で浮いた状態」のクランクシャフトは、ほぼ永遠に磨耗せず、数百万キロも回転できるはずです。

そんな訳でして、油圧のかかっていないエンジンのスタート時点が、クランクとベアリングが直接さわっている、鉄と鉄がぶつかっている、一番クリティカル(英語カッコイイ)な瞬間であり、オイルが流れ落ちているような、長く放置されたエンジンのスタートは慎重にしなければいけません。

エンジンを守るための掛け方は、ポルシェ以前の初期の自動車時代に出来ていました。 クランクハンドルという、ジャッキの棒のようなものを使い、エンジンを手で回してオイルをベアリングに送り、それから燃料をキャブに入れてスタートさせていました。 VWビートルの初期タイプではクランクハンドル用の穴があり、プーリーにもそのための刻みが残っています。 単にコンプレッションを出すために、刻みキックをする2ストのバイクとは意味合いが違います。

ポルシェ以前、電気式のスターターモーターがUSAで発明され(これも特許です)、最初は電気接点の都合で「足踏み式スイッチ」でしたが、やがてダッシュボードに電気スイッチが配置されました。 これが356プリAで見かけるダッシュの押しボタンで、さらに時代が進んでエンジンキーにセルモータスイッチが内臓されるようになって、今の時代はリモコンで動かせるようにもなりました。

プリAでは昔の、エンジンを守るエンジンスタートが出来ますし、A以後の356でも、ゆっくりでエンジンスタートすれば同じ効果があります。

プリAでは最初はエンジンキーをオンにしませんし、アクセルも踏みません(又は床まで一杯に踏んだままでセルが回りやすくします)。 ダッシュのボタンのみでエンジンをセルモーターで回すと、内臓のオイルポンプが回り、油圧を発生します。 セルモーターのみでは、頑張っても2キロ程度、通常1キロ程度の油圧ですが、それでもクランクを守るには必要です。 この時点からエンジンキーをオンにして、再度セルモーターを回しますと、すぐに緑のオイルランプが消灯してスタート準備ができています。

A以後ならばアクセルを踏まず、数秒間、セルを回しているとオイルランプの緑色が消灯します。 これで0.5キロ以上の油圧が掛かりました。 この時点からアクセルを踏んでスタートすると、すぐに緑のオイルランプが消灯して、油圧がエンジンを守ります。

Sany2857 (A・Bタイプで左のノブはアクセル・ノブ=ペダル固定用)

この方法でスタートすると、初期のオイルが無いクランクに掛かる力はセルモーターで回転させる力だけなので、とても耐久性が向上します。

逆に、現代の車のように「一発」で掛けると、オイルが無い状態からいっぺんに高回転になるので、エンジンの寿命としては短くなります。

また、356のオイルフィルターは「空間」があり、始動時にはその「空間」を埋めるために、初期の数秒はオイルがエンジンに回らない特性もあります。 そのためにも最初は油圧が掛かるのを待つ必要があります。Sany2883 Sany2882

(オイルフィルター内部では左のオイルラインの取り付けまでしかオイルは残っていません。 上の三角のフタの中身は空になっています)

そんなに急いでエンジン掛けなくても356は速いから、皆にすぐ追いつくでしょう。

(^_^)/~~

|

« 356のエンジンスタート・アクセル | トップページ | オイルフィルターの真実 »

コメント

毎回大変勉強になり、更新されるのを楽しみに待っています。
今回通常時でもオイルフィルターに空間があり数秒間は、オイルがエンジンに回らないこと初めて知りました。オイル交換のやり方は、過去のブログを参照して実施していましたが、オイルフィルターを同時に交換した場合、どのようなことに注意しなければいけないのでしょうか?

投稿: ono | 2008年5月22日 (木) 05時27分

ONOさん、こんにちは。 フィルターについては詳しく書きますが、内部の掃除がされていない、過去にきれいにしたことがないのであれば、取り外しての清掃です。
内部がきれいであれば、残っているオイルを吸いだして(灯油用のやすいパコパコするポンプを買ってください)、軍手をはめて、内部をふき取ります。 フィルターを入れたあとにオイルを足しますが、左のオイル入り口まで入れた後、少し経つとフィルターがオイルを吸うので少し減ります。 再度、少し足せばよいです。 上一杯に入れても同じなので入れすぎに注意。 もっとも大事なことは「オイルの入れ忘れ」で、エンジンを掛けても油圧が上がらず、バンバン吹かして油圧が上がったころにはエンジンが壊れています。
くれぐれもご注意ください。 (^ _ ^ ;

投稿: 山五郎 | 2008年5月22日 (木) 12時04分

ありがとうございました。いろいろな事が分かってくると、今までしてきたことを思い出すだけでぞ~とします。
これからもよろしくお願いします。

投稿: ono | 2008年5月22日 (木) 19時31分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 356のエンジンスタート・アクセル | トップページ | オイルフィルターの真実 »